ダイの大冒険─最終回後─二次小説

ダイの大冒険最終回後の二次小説になります。

ピラァ・オブ・バーン



─ロン・ベルクの危惧─


 


 オーザム南部の地に足を踏み入れたロン・ベルクはそこに聳え立つピラァの周辺を探っていた。


 ほんの数日前、大魔王バーンが地上の六つの地点に投下した、このピラァ・オブ・バーンはバーンの長きに渡る地上破滅計画の最大にして最後の一手だった。しかし、神の涙であったゴールデンメタルスライムの不可思議な奇跡の力により勇者ダイの意思を受けた人々の手でピラァ・オブ・バーンによる地上破滅計画は失敗に終わった。


「……とりあえずはここも問題はなさそうだ……」


 大戦後の翌日から今日で三本目のピラァの状態を確認したロン・ベルクは、例のピラァだけでなくその周辺の様子も時間を掛けて探っていた。一本につき、半日以上も費やして辺りを見て回る程に時間を掛け、決して警戒心を絶やすことはなかった。


「あのバーンの事、ただの地上破滅計画の為だけにこのピラァを落としたとは思えなかったが……やはり、俺の考え過ぎだったか……」


 ロン・ベルクは地上のどの存在よりも大魔王バーンと近い位置で関わりのあった男であった為、バーンの恐ろしく狡猾な面もよく理解していた。


(「六芒星……魔力を増幅させて高めた状態でこの地上の破壊を企てていたと言うが……ヤツは俺にこうも言った……いくつかの爆弾の時限装置が作動しなくても一つでも爆発すれば残った核晶(コア)が誘爆するのは必至……と……」)


 ロン・ベルクはあの時のバーンの言葉を思い出していた。そして、ピラァの頂上にある黒の核晶(コア)を思い浮かべながらその頂上を見上げた。やがて、上空に飛び立つとそのピラァの頂上に降り立ち氷漬けの黒の核晶(コア)を睨み付けた。


「あの時は俺も聞き流したが、よく考えたら妙に違和感のある言葉だった……この地上を吹き飛ばすなら少なくとも三本のピラァにある三つの黒の核晶(コア)があれば充分……おおよそ人が簡単に立ち入れない地などにピラァを落とせばもっと簡単に地上破壊は成し得た筈だ……そうなれば、わざわざ六つの核晶(コア)など用意する必要はない……ましてや六本のピラァの六芒星により魔力を増幅させる必要など、どこにあったのか……」


 ピラァの頂上から見た景色は晴れ渡り、かつてロン・ベルクが魔界で見ていた景色とはまるで違う美しさが広がっていた。


「バーンはこの景色をも全て消し去ろうとしていたというのか……本当にそれだけの為にこのピラァと黒の核晶(コア)を……」


 その時、ロン・ベルクの脳裏にダイが空に消えたあの時の光景が広がった。


「……!?まさか……!そうだ!あの時のヤツのあの言葉!?」 


 思い出されるのはダイが死闘の末に大魔王バーンを打ち、地上に帰還したその後……首を傍らに持った不気味な様相で姿を表した死神……そして、その時に自分が本物のキルバーンと名乗った一つ目ピエロのあの言葉。


(「ヴェルザー様は大魔王と違って地上も欲しいんだ」)


 ロン・ベルクはその事を考えていた。


「このピラァの六芒星は……まさかヤツの……ヴェルザーへの何らかのメッセージか!?もし、なんらかの形で地上破滅計画が成されなかった時の為に……ヤツに、ヴェルザーに何かを託す為に……!?」


 ロン・ベルクは自分が思い当たったこの考えに戦慄した。


「いや、しかしそれを証明するには、まだ根拠が足らん……何かこのピラァの存在とヴェルザーに繋がるモノがなければ……」


 両腕の傷が疼いている。手を握り締めても本来の半分の力も入らない。もどかしい思いがロン・ベルクの胸中を抉るようだった。


「ダイ……やはりダイの存在がなくては…再びこの世界に迫る大きな危機に太刀打ち出来ん……」


 そう言うと彼はパプニカの方角に目を向けた。


「あの剣は確かパプニカにあったな……」


 大魔王バーンを倒したダイは空からその自身の名を冠されたダイの剣と共に落ちて来た。その際に大地に突き刺さった剣は、現在パプニカ王国において厳重に保管されている。


 そして、ロン・ベルクは何かを思い付くとピラァの頂上から降りてオーザムのより雪深い地域へと足を踏み入れて行った。


「この地上に初めて足を踏み入れて以来だな……まさか、くたばってはいまいな……我が師よ……」


 そう呟くと、彼はある目的地を目指してその歩みを進めた。


 

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✦作者コメント✦



 さて、いよいよ少しずつ黒の核晶(コア)について物語を進めていきたいと思います。たまたま先週はテレビアニメのダイの大冒険で大魔王バーンが黒の核晶(コア)で、死の大地吹き飛ばしてくれました。アニメで表現されると凄いですね(^^;やはり、おそるべし魔界の超破壊兵器といったところです。こちらとしてもその破壊力をいかんなく表現したいところですが、ロン・ベルクがいち早く気付いてました。無論このまま黒の核晶(コア)を放っておいていいワケないですから、彼には今後も色々仕事をして貰おうと思います。暫くは武器が作れそうにないので……(^^;今後のロン・ベルクにもご期待下さい。