ダイの大冒険─最終回後─二次小説

ダイの大冒険最終回後の二次小説になります。

ポルトスのピラァ


 


 ─拳聖の提言─


 


「フム……流石はレオナ姫じゃな……早速動き出したようだ……」


 ロモス王国のシナナ王は先刻パプニカから届いたレオナからの書簡に頷きながら目を通していた。


「我が国は比較的他の国に比べて魔王軍による被害はさほどでもなかったが、パプニカも少しずつ復興が成されているようじゃな……後は……勇者か……」


 そう呟くとシナナ王は側近を呼び、自国の精鋭部隊で編成した勇者ダイ捜索隊の進捗状況を確認した。


「以前の武術大会のメンバーと兵士から選抜した精鋭で、ダイ様の捜索においての立案等を上げて準備は着々と進んでおります」


「そうか……ダイは我がロモスを二度も救ってくれた勇者じゃ、なんとしても探し出さなければならん!今パプニカ王国のレオナ姫から送られてきた書簡にもあったが、あちらも勇者ダイ捜索隊の結成を決め着々と準備を進めておるそうだ」


 書簡に書かれていたパプニカの現状を話し、更に側近にはカール王国への復興支援の為の派遣隊についても訊ねる。大戦から五日経った現在、ロモス王国は既にカール王国への復興支援の為の手筈を整えていた。


「レオナ姫の陣頭指揮も全く見事なものじゃ……して、カール王国への復興支援の派遣隊じゃが、予定通り今日向かうのじゃな……」


「はっ!つきましては、国王様に出発のご挨拶をさせて頂きたいと派遣隊の隊士が申しておりますが……」


「そうか、ワシも激励の言葉を贈りたかったからのう……よかろう」


「かしこまりました!!それでは派遣隊へ伝えて参ります!」


「うむ、よろしく頼む……」


 シナナ王は側近にそう告げると、再びレオナからの書簡に目を落とす……すると、一人の兵士が突然声を上げて駆け込んで来た。


「国王様!!大変でございますっ!!」


「……!?なんじゃっ!?どうした……!?」


 兵士の様子にシナナ王も慌てて顔を上げる。


「はっ!只今あの拳聖ブロキーナ様がお越しになられまして……」


「なんとっ!ブロキーナ殿がっ!?お、おお!?すぐにお通ししなさい!!」


「はっ!かしこまりました!!」


 シナナ王はマァムの師匠でもある武術の神ブロキーナの来訪に驚きながらも一報を伝えに来た兵士に命じた。


 


「来たよ~ん♪」


 やがて、ロモス王の前でもピースをしながら茶目っ気たっぷりに登場したブロキーナ。やや苦笑しながらも、シナナ王は拳聖と名高い彼を丁重にもてなした。


「これはブロキーナ殿、あの武術大会以来ですな……して、今日はどうされました?」


 シナナ王が来訪の意図を訊ねるとブロキーナは真剣な表情で言う。


「足首くねくね病のリハビリを兼ねて山から降りて街に買い出しに来たんじゃが……」


「は、はぁ……」


「それとは別にちと気になる事がありましてな……ロモス王の耳にも入れておくべきかと……」


「気になる事……?」


 そう言うとブロキーナはシナナ王の傍らの従者達にチラッと視線を向ける。シナナ王はそんなブロキーナの意図を汲み取り、彼等に命じた。


「そなた等はすまんが、少し外してくれ……」


 従者はそれぞれが顔を見合わせると、皆一様にシナナ王に頭を垂れて場を後にした。


「ブロキーナ殿これでよいじゃろうか?」


「いやいや、大袈裟にして申し訳ない……ただ、少しデリケートな話しなのでな……実は昨日あのロン・ベルク殿とこの大陸に聳え立つピラァの周辺で出くわしましてな……」


 そう言うとブロキーナは神妙な声色で語り出した……


 


 昨夜の事……ブロキーナは数日前にあのバーンパレスから、このロモス王国の北西にあるポルトスという町に投下されたピラァ・オブ・バーンの周辺を見回っていた。


「ふむ……かつては小さいながらも活気に満ちて賑わっていた町が跡形も無くなるとは……なんと酷い事よ……」


 ピラァ・オブ・バーンが投下された地はその強大な衝撃によってその全てを破壊し尽くされ、跡には巨大なクレーターしか残らない。それはまさに大魔王バーンが地上に穿った恐るべき破壊兵器だった。


 ブロキーナはこの町がまだ健在だった頃に、よく山から降りて日常品の買い出しに来ていた。そんな折に触れて顔見知りになった町の人間も決して少なくはなかった為、ブロキーナの黒眼鏡の奥の瞳には悲壮と憤怒の色が滲んでいた。


「大魔王バーンが倒れたとは言え、人々の悲しみや不安が全て消えたワケではない……今はまだ、勝ち取った平和に浸る日常が許されているのだろうが……」


 大魔王のピラァ投下によって、既に跡形もなくなったポルトスの町。ブロキーナはその場所を見つめながら一人、感慨深く呟いている。


 すると……


「ああ、全くその通りだな………」


 ブロキーナの呟きに応える声。だが、その気配に既に気付いていたのか、彼はさして驚きもせずにゆっくりと振り返った。


「ホホッ……お主も来ておったか……ロン・ベルク殿……」


「あの時は、可笑しな道化のなりをしていたが……あの拳聖ブロキーナがこんなところで感慨に耽っている場に出くわすとはな……」


 バーンパレスが地上に落ちた時、ブロキーナはポップ達と共に無事に墜落の衝撃を逃れて地上に降り立った。その際にロン・ベルクはビーストくんになりきっていたブロキーナと顔を合わせていたのだ。


「お主も何かを感じておるようだの……このピラァに……」


 ブロキーナは聳え立つピラァを忌々しく見据える。


「……も……という事はアンタもか……?」


「確信はないがのう……だが、やはり解せんのでな……こんな大層で尚且つ厄介な代物……準備する方とて容易な覚悟ではなかったろうに……」


「確かに……あの頂には死の大地を消し飛ばした10倍の破壊力を持つ黒の核晶(コア)があるからな……」


 二人は静かな戦慄を覚えながらピラァの頂を見つめる。


「バーンが語った六芒星の意味は、本人曰く魔法力増大の狙いがあったというが……」


「それだけではない……ということだな……?」


「まぁさっきの言葉通り……確信はないがのう……」


「俺も各地にこうして聳えるピラァがどうにも気になっていてな、これまでいくつかの地をまわって来て、このロモスの地のピラァで四本目だ……それで、この周辺で何か解ったことはあるか……拳聖よ……」


 ロン・ベルクは真っ直ぐとブロキーナを見据えて訊ねた。すると、ブロキーナもロン・ベルクの眼を見据える。


「かつてこの地にはポルトスという小さな町があった……」


「ポルトス……その町があのピラァの投下で一瞬で消え去ったというワケか……」


 ロン・ベルクは数日前にはその町があったであろう巨大なクレーター跡に目を向ける。


「そこに住む人々の全てがのう……じゃがそのポルトスの町はその昔にある恐ろしい出来事があった舞台でもあるのじゃ……」


「恐ろしい出来事?」


 ブロキーナは頷くとゆっくりと語り出した。


「今からおよそ14年前の事……この辺り一帯の町や村で幼い女児だけにある呪いが掛けられた事があった……」


「呪い……?」


「うむ……しかも生まれてから二~三歳くらい迄の女児ばかりでの……」


「妙だな……それで、具体的にどんな呪いだったんだ?」


 ロン・ベルクが訊ねるとブロキーナは更に神妙な面持ちになる。


「呪いに掛けられた女児は全て高熱に晒され、虫の息となる状態にまで命の危機に陥った……そして、その女児の親の元には魔族と思われる者からメッセージが送られてきた」


「魔族?」


「お主も知っておるじゃろ?かつてハドラーも使っておった鏡を使った通信呪文じゃよ……」


「そういう事か……確かにそれを使って来たなら先ず間違いなく魔族だろう……しかし、何故女児ばかりが……しかも、そのメッセージとは……?」


「送られてきたメッセージには"月満ちる時……闇に捧げる澄んだ瞳を選ばん"とだけしかなく字面の内容は解るがその意味するところが全く理解出来なかったそうじゃ……しかし、幸いにもある男の活躍でその子供達の呪いは解かれることになった……」


「ある男……?」


 ロン・ベルクは怪訝な表情でブロキーナに問う。


「かつて勇者アバンと共にハドラー率いる魔王軍に立ち向かった戦士……ロカという男じゃ……」


「なんだと?ロカというと、あの武闘家の娘の……」


「おや?知っておったか……そうじゃワシの弟子でもあり、アバンの使徒の一人マァムの父親じゃよ……そして、そのマァム自身もまた幼いその頃、他の子供達同様にその呪いを掛けられておった……」


「しかし、その呪いを掛けた相手も魔族という事しか解らんのに、どうやって戦士ロカは呪いを解いたのだ?」


 ロン・ベルクは最もな質問を投げ掛ける。


「確かにのう……しかもロカ殿は戦士……あらゆる呪法や魔法に精通しているアバン殿やマトリフ殿ならまだしも、彼にはその様な知識も殆どなかった……だが……」


「だが……?」


「たった一つだけ……ロカ殿がその魔族の呪いを解く方法を見付けたのじゃ……」


 ロン・ベルクは静かにブロキーナの次の言葉を待つ。


「それは自分自身にその呪いを移すという方法だった……」


「……!?」


「その当時は魔王ハドラーが倒れて一年が経とうとしていた頃でのう……各地の復興もほぼ成されて、まさに世界は平和そのものじゃった……しかし、この地域一帯だけはその呪いに人々が苦しめられていた……中には苦しむ我が子が不憫で共に死のうとした親までいた程じゃ……だが、そんな時……ロカ殿はそのポルトスの町に残るある言い伝えを訊いた」


 ブロキーナは更に語る。


「ポルトスの町はその昔、ある一人の高名な魔道士が世界中を回り、その長い旅路の末に腰を落ち着けた地であった……そして、その際にその魔道士はあらゆる呪法や魔術の知識を収めた世界でたった一つの魔導書ミーミルの書を残した」


「ミーミル……ミーミルとは確か天界、魔界、そしてこの人間界全ての知識を有すると言う知の神の名だ……」


「うむ、恐らくはその知の神ミーミルにあやかって付けられたのじゃろうな……そして、その名の通り優れた魔導書であった……」


「その魔導書にあったのだな……その呪いを解く方法が……」


 すると、ブロキーナはある方向を指差した。


「ポルトスの町に代々受け継がれて来たその魔導書にはこうあった……町の北東の洞窟に満月の夜、あらゆる呪いを取り除く不思議な実をつける木があると……しかし、その実は呪いを掛けられた者ではなく、呪いを解く者が口にしなければならないと……」


「どういう事だ?」


「その実はあらゆる呪いの力を解くと言ってもその呪いを消すというのではなく、吸収するという性質のモノだったらしくてのう……しかもその実はそれを食した者にその呪いを吸収させて掛けられた呪いを移すという代物だったのじゃよ……」


「という事は戦士ロカはその実を……?」


「うむ……しかも、その実は元々は魔界の木になる実だった、その為ロカ殿がその実を口にすれば、その呪いを吸収し解くと同時にこの人間界では生きていく事が出来なくなってしまうという事がそのミーミルの書にあったという話しだった……」


「確かに地上の人間が魔界の食物を口にしてタダで済むワケはない……そうか、そんな事がな……」


「そして、この話はロモス王も知っておる……ロモス王国内の一部とは言え、その町や村で起きた事だったからのう……当時のシナナ王も頭を抱えておったのじゃ……」


 ブロキーナは遥か遠くのロモス城を眺めて言った。


「そうか……つまり、それで戦士ロカは……」


 ロン・ベルクはロカが子供達に掛けられたその謎の呪いを一身に受けて、自らが犠牲になったと理解した。


「それにしても随分詳しいが、アンタもその時に出くわした事なのか?」


 ロン・ベルクが訊ねる。しかし、ブロキーナはゆっくりと左右に首を振った。


「ワシも後から訊いた話しじゃ……ロカ殿の妻であるレイラ殿からのう……ワシだけでなく後にアバン殿やマトリフ殿もロカ殿の事を悔いておったが、その呪いは満月の夜までに解かなくては子供達の命が危うかったからのう……ロカ殿はアバン殿達に相談する時も無く、自らを犠牲にするといった選択しかなかったという事じゃった……」


 ブロキーナの脳裏にはロカを失ったレイラの哀しげな表情が浮かぶ……そして、同時にその悲しみを堪えながら優しくマァムに微笑むその温かな表情も浮かんでいた。


「なるほどな……この地にはそんな忌まわしい出来事があったのか……だが、あの聳え立つピラァと今の話はどういう繋がりがあるんだ?」


「うむ、ワシなりの見解なのじゃが……さっき話しに出た呪いを移す実。それはポルトスの町の北東にある洞窟の魔界の木になると言ったが、実はその洞窟がまだ存在しているのじゃよ……」


「バーンのピラァ投下によって町同様に消え去ったのではないのか……!?」


 ロン・ベルクのその言葉にブロキーナは意味深に頷く。


「ならば、ちょいと行ってみようかの……その洞窟付近まで……」


 そうして二人は、北東の洞窟まで足を向けた。


 


「これは……!!!?」


「さすがのお主も驚いたようだのう……まぁ、最もそういうワシも始めにこれを見た時は目を疑った……」


 ブロキーナの案内でロン・ベルクがポルトス北東の洞窟付近に到着すると、その一帯はまるでバーンのピラァ投下の被害を避けるようにその場の全てがその崩壊を免れていた。


「ピラァ投下の際に出来たクレーターさえもここまで広がってはいないな……」


「まるで、この先の洞窟に敢えて影響を及ぼさない様に予め破壊させる範囲を計算していた様にもみえるじゃろう?」


「ああ……むしろそうとしか思えん……やはり何か有るようだな、その洞窟に……微かだか俺の様な魔族にしかわからない物騒な空気も感じる……」


 ロン・ベルクは洞窟がある方向に鋭い視線を向ける。


「ふむ……この洞窟はロカ殿の活躍でその忌まわしい呪いが解かれてから解呪の洞窟(げじゅのどうくつ)と言われておる……しかし、魔族のお主が何かを感じるというなら、やはり放っておけない何かがあるようじゃのう……」


 ロン・ベルクはブロキーナの言葉に黙って頷くと一つ忠告した。


「それとこの大陸の管轄はロモスだったな、念の為にロモス国王の耳にも入れてこの付近に人を近付けさせない様にした方が良いだろう……」


「うむ、そうじゃな……国王には明日にでもワシが城に出向いて伝えておこう……」


 そうして、ブロキーナとロン・ベルクはその場を後にした。


 


 そして、再びロモス城………


「と、まぁそんな話しになりましてな……」 


 ブロキーナはシナナ王にロン・ベルクとの邂逅からの経緯をひとしきり話した。


「なるほどのう……そのロン・ベルクとかいう魔族にワシは面識はないが、ダイに与えたあの覇者の冠からダイの剣を作り上げた男だったらしいですな……」


「うむ、そして大魔王バーンや更に魔界の事においてもワシ等より遥かに精通しておりますからな……彼の言葉は気に止めておかれるが良いかと……」


 ブロキーナはシナナ王にロン・ベルクの意見を進言する。


「わかりました……ただ、まだ詳しい事はわからないようじゃから国民はもちろん家臣達にも不安を広げない様にこちらも他言しない様に慎重に捉えるとしよう……」


「そうですな……ワシもアバン殿やマトリフ殿には相談してみるつもりじゃが、なるべく情報は広げんように少し秘密裏に動いた方が良いでしょうな……」


 そうして二人は、ポルトス北東の解呪の洞窟の件に関しては、共有しながらも慎重に扱う事を決めた。


「それとブロキーナ殿……やはりマァムには……」


 更にシナナ王はブロキーナに神妙な表情で訊ねる。


「ロカ殿の事ですな……いずれはレイラ殿からマァムに話をされるかと思うが……こればかりは親子の事であるが故に、やはり我々がおいそれとは口を出していいことではないでしょうな……」


「うむ……そうですな……しかし、思い返せば、マァムはなんと不憫な子であろうか……」


 シナナ王も過去にロカやマァムの身に起きた事を知っていた為、彼等の事を深く慮った。


「じゃが、あの子ならきっと乗り越えられるじゃろう……頼もしい仲間がおりますからな……」


 ブロキーナはそう言いながらニコッと笑顔を見せる。


「そうですな……ブロキーナ殿、今日は貴重な話を感謝致しますぞ」


「いやいや……年寄りがでしゃばる様で申し訳ない……ただ、本当に何もなければ良いのだが……」


「ええ、本当に……」


 その後、ブロキーナはロモス城を後にして、自身の住処のある山へ帰って行った。そして、道中聳え立つピラァを目にしながら、ブロキーナは底知れない新たな驚異の予感を感じずにはいられなかった。


 


 

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✦作者コメント✦



 少しずつ魔界に繋がる物語が進みます。更にここでロカの真相を書いていこうと思います。死んだと思われていたロカでしたが、本編でその詳細が語られる事はなかったので、オリジナルストーリーになりますが、魔界とロカの繋がりから物語を作りたいと思います。更に解呪の洞窟もドラクエっぽさを意識して楽しんで書いていこうと思います。

もう一人の名工


 


 ─ドワーフ族 ルゲル─


 


 100年以上もの間、人の足が踏み入れられる事のない未踏の地。


 コタムカイン雪原──。


 その雪原から程近く、ここにも人が全く近寄る事のない場所がある。そして、その見渡す限りの白い世界の中にあって永久に溶けることのない豪雪地帯に彼の住居兼仕事場があった。


「ただいま帰りました」


 一人の魔族の女が一仕事を終えて、その男の仕事場に現れた。


「ああ……帰ったか、ご苦労だったな……で、どうだ……?」


 ややくぐもった声で年老いた男は女魔族に訊ねた。


「ええ、受注した分の武具は無事に納めました。皆、相変わらず品が良いと喜んでいましたよ♪」


 女魔族はどこか誇らしそうにそう言った。


「ワシの作るモノが出来が悪いワケないじゃろうが!そうじゃなくて、訊きたいのは王女の件だ!!」


 男は不機嫌そうに言い放つ。


「もっ……!申し訳ありませんっ!!王女の行方はやはり……わからない様です……」


「そうか……相変わらずのヤンチャ娘だな……アイツ等も大変だ……」


 他人事の様にそう言いながらも彼のその言葉にはどこか暖かいモノが感じられた。


「色々と探してはいるみたいですが、彼女は先代王女から受け継いだ絶大な魔法力がありますからレムオル等で姿を隠して逃げ回る事など造作も無いことでしょうね……」


 姿を消す事の出来るレムオルという魔法はかなり高等な呪文と言えた。少なくとも人間界にその使い手は殆どいない。


「ただ、少し気になる話しもありまして……」


「気になる話し……?」


 女魔族の言葉に男は反応する。


「ええ、どうやら天界と魔界で何かが起きていると……まぁざっくりとした噂話し程度ではありますが、警戒心の強い彼等の事ですからもしかしたら……」


「ふむ……何かを感じたか……それともヤツ等独自の情報網から何かを掴んだのか……」


「そうかもしれませんね……ただ、なんにしても王女の行方不明と関係なければ良いのですが……」


「ふむ……確かにそうじゃな……だが、天界はともかく魔界に関して言えば大魔王バーンが倒された事が何かしら影響を与えているのかも知れんな………魔界を二分していた勢力の片方が崩れたとなれば、あの冥竜王が大人しくしているワケがない……」


 年老いたその男は鋭い視線を虚空に向けて呟く。女魔族もそんな男の表情をみて険しい顔で頷いたが、ふとある一人の男の事が脳裏に浮かんだ。


(「ロン………」)


 女魔族のその思い詰めた顔を見て年老いた男はゆっくりと腰を上げる、すると近くの棚から一つの酒瓶と一通の手紙を手にして女魔族にその手紙の方だけを手渡した。


「ルゲル様……?」


「どういう風の吹き回しか……お前とワシの留守の間にどうやらヤツが来たようだ……今朝ワシが帰ったら扉の前にその手紙とコイツが置かれていた」


 男は手にしている酒瓶を持つ手を軽く上げながら言った。女魔族は怪訝な表情で、その手紙を受け取ると、ルゲルと呼ばれたその年老いた男は読んでみろと目で訴えてきた。それに応える様にその手紙を開く。すると、見覚えのあるその文字に彼女はその目を見開いた。


「まさか……!?」


「そのまさかだ……アイツが魔界を出てこの地上に来たばかりのその頃以来だから……ざっと90年近く……全く今更何のつもりか……」


 しかし、ルゲルのそのくぐもった声からは、その相手を憎からず思っている事が不思議と感じられる。


「お前もそう思うだろう?キュレ……」


「私は……」


 キュレと呼ばれた女魔族はそう言うと俯いてしまった。ルゲルはそんな彼女をみると鼻で笑いながらも柔らかい笑みを浮かべて言う。


「アイツは俺の元から去る時、必ず真魔剛竜剣を越える武器を作ってみせると息巻いていたが、何の事はないその後のアイツの噂はろくなもんじゃなかったな………」


 ルゲルはキュレに背を向けると作業台の上の古い小さなタンブラーに手にしていた酒瓶を傾けて中身を注いだ。


「だが、まぁ……酒の好みは変わらんらしい……」


 注いだ酒をルゲルは一気に呷る。


「お互いにな……」


 そう言って微笑すると、キュレに告げた。


「エルフのトコから帰って来たばかりで悪いが、アイツのところに行ってみちゃくんねぇかキュレ……」


「え……!?」


 キュレは思わず驚いた顔をルゲルに向ける。


「アイツがここに来たことを考えると余程の事があったのかも知れん……もしくわこれから何かがあるのか……」


 ルゲルは神妙な眼差しで先程の様に虚空を見つめる。すると、キュレが訊ねる。


「しかし、私は彼の居場所など……」


 その問いにルゲルは再び鼻で笑いながら言う。


「フン……惚けるな……お前がワシに隠れてヤツの居場所を突き止めていたことはとっくに知っているわ……」


 ルゲルは鋭い視線をキュレに向ける。


「も、申し訳ありません!何度もご報告しようと思ったのですが!」


 師の目を盗んで独断で行っていたこと故にキュレは大いに恐縮した。


「まぁいい……お前のアイツに対する想いをワシも知らんワケではない……」


「い、いえ……」


 キュレは顔を赤らめながら俯いている。


「アイツが大魔王バーンを討った勇者に肩入れしていた事は情報通のエルフ達に訊いたが、実際はどうしているのかははっきりとは解らんでな……すまんな……ワシも着いていければいいんじゃが、ようやくアレの修復を進められそうな良い材料も手に入ったのでな……少しでも進めないとならん……」


 言いながらルゲルは仕事場の奥に視線を向ける。


「いえ、あの剣の修復はそう簡単にはいかない事は私も理解しておりますから……」 


 キュレはそう言いながら、ルゲルがかつてエルフの里にキュレと赴いた際に先代のエルフの王女から直々にある剣の修復を依頼された場面を思い出していた。


 


「王女……この剣はまさか……!?」


「はい……この剣こそが、我がエルフ一族が代々伝え守りし伝説の一刀……レーヴァテインです」


 その剣は不思議な力を醸し出していた。普通の剣と違い、どこかこの剣自体の意思の様なモノを強く感じられる雰囲気があった。それ故、持ち主を選ぶ剣だと言う事を容易に感じさせた。また、それでいて非常に強大な力を内に秘めながら、今はただじっと自分に相応しい持ち主を待ち続けている様でもあった。


 しかし、残念なことにその刀身には今にも折れてしまいそうな深い傷が刻まれていた。


「この傷は……?」


 ルゲルが厳しい眼差しでその傷を見つめながら問う。


「遥か昔、我がエルフ一族の神にして最初の王フレイルはこのエルフの世界をその手に収めようと画策した魔界の軍勢との戦いに挑みました。我等の祖先でもある当時のエルフの戦士達も王のフレイルと共にその熾烈な戦いを繰り広げました。そして、とうとう魔界軍最後の将軍との一騎討ちにおいてフレイル王はこのレーヴァテインで見事にその相手を斬り倒しエルフの世界を守り抜きました。しかし、その将軍の渾身の最後の一太刀を受けたこのレーヴァテインは将軍を斬り倒した一振りを最後にこの様な深い傷を刻まれ、今日まで数百年の長きに渡り修復が成される事は叶わなかったのです……」


 エルフの神にして初代エルフ王フレイルとその彼の愛刀レーヴァテイン。そして、フレイルが一族を守る為に戦った経緯とその後のレーヴァテインに起きた事象を切々と語る先代王女の話にルゲルは真剣に耳を傾けていた。


「成る程……その様な歴史がこの剣にありましたか……」


「この数百年、魔界のみならず天界にもこの剣の修復を求めて、その情報を得る為に手立てを尽くしたのですが……」


 王女の言葉にルゲルはゆっくりと顔を上げると訊ねる。


「それで、ワシの事はどこで?」


 王女はその問いには答えず、ルゲルの少し後ろで待機しているキュレに視線を向ける。


「あちらの方は娘さんですか?」


「ん?あ、ああ……まぁ弟子のようなモノです……こいつともう一人、出来の悪いヤツがおりますが……」


「ロン・ベルク……ですね?」


 その王女の言葉に目を見開いて驚いたのはルゲルではなくキュレの方だった。


「フフ……やはり存じておりましたか……王女もお人が悪い……アイツの手を借りたいが為にワシ等をここへ呼んだのですな……」


 ルゲルはその皺だらけの表情の中に鋭い視線を王女に向けた。


「何故?そう思うのです?」


「あなたは先程こう言った……この剣の修復を求めて天界と同時に魔界にもその伝を求めたと……ならば魔界の名工ロン・ベルクの名を知らないワケはない……しかし、ヤツは今現在、魔界の君主大魔王バーンの側に居ついておる……つまりエルフの王女たるものが大魔王との繋がりのある男にノコノコと顔を合わせるワケにもいかないと、恐らくはそちらの側近辺りが進言したのではあるまいか………?」


 そう言って、ルゲルは更に強い視線をエルフの傍に控えている側近に向けると、側近は思わずたじろいだ。


「フフ……さすがに鋭いですね……その眼力は武器の目利きだけに使うワケではなさそうですね……」


「しかし、残念ながらワシ等もヤツとは暫く顔を合わせてはおらんのです………無論何処にいるのかも見当もつきませんで……」


「そうですか………しかしルゲル殿……私は少し違う見解なのですよ……」


「違う見解……?」


 その言葉にルゲルもキュレも訝しく王女を見る。


「数百年……その間には幾人もの武器職人がこの剣の修復に挑戦して来ました……しかし、誰一人として完全な修復を成し遂げる事は叶わなかった……ですから例え魔界の名工と呼ばれているロン・ベルクの手でも必ず修復出来るとはわかりません……」


「ならば何故!?先程の様な事を……!?」


 王女の言葉にやや苛立ちを込めてキュレが声を上げる。


「やめないかキュレ……」


「……!?も、申し訳ありません……」


 諌めるルゲルにキュレは頭を下げる。


「いえ、そうですね……あなたがそう言われるのも無理のない事です……しかし、私の見解はこうなのです……魔界の名工ロン・ベルク……それと、もう一人……天界の名工ルゲル・ベルク、この二人の手によればこの傷付き眠るレーヴァテインに再び、あのフレイル王が携えていた頃の輝きと偉大なる力を取り戻す事が出来るのではないかと……」


「……!?ルゲル様と……ロンが……力を合わせるという事ですか!?」


 キュレの目には不思議と希望の光が浮かんでいる。


「ホホ……これは、また懐かしい……ワシが天界の名工などと呼ばれていたのはもう二百年も前の話し……」


「いいえ……あなたの作る武器や防具を私はいつも一つ一つ見せて頂いております……決してその腕は衰えておりません……」


「あの居眠りをしながら作ったモノがですか……?ハハハ……」


「ル、ルゲル様……!?」


 さすがにエルフの王女に失礼かと思ったのかキュレはルゲルの言葉に戸惑うと王女は柔らかく微笑んで言った。


「ええ、居眠りをしてあれだけのモノが出来るのなら尚更ですよルゲル殿……」


「ホホ!こりゃ一本取られましたな!!ハハハハハ!!」


「フフフ!」


 ルゲルと王女は何故か楽しそうに笑い合っているが、キュレはハラハラしっぱなしで、とても笑えなかった。


「わかりました王女よ……この剣レーヴァテインはとりあえずワシに預からせて頂こう……傍においてワシもこの剣をどう修復出来るか研究してみますわ……」


「ありがとうございます……貴方ならきっとそうおっしゃってくれると思っておりました……ただ……」


 王女は言葉を止めてその視線で懸念を示す。


「ロンの件に関してはヤツから何かしらの反応が示されなければ正直難しいですな……さすがにワシもコイツもあの大魔王バーンのところにまでアイツを取り戻しに行くのは躊躇われますでな……」


 ルゲルの言葉にエルフの王女も深い理解を示しながら頷いた。そう、魔界の君主大魔王バーンの元にはエルフの王女とてそうそう赴くことは出来ないからだ。側近の話しによれば大魔王バーンの傍には常時、暗黒闘気を操る恐ろしい男が控えているらしい。そう考えればバーンの顔を見ることなくその男に消される可能性もあるのだ。


「ロン・ベルクの事に関しては私達も見守る他はなさそうですね……あの大魔王バーンがお気に入りの名工をそうやすやすと渡すとも思えませんから……」


「そういうことですな……全くヤツは何故バーン等についたのか……かつての弟子が本当に申し訳ない……」


 その言葉にキュレは人知れず胸を痛めていた。


 ロン・ベルクが魔界の名工と呼ばれている中でどうして大魔王バーンに仕えているのか……そのロン・ベルクの心の内をいくら想像しても今のキュレには理解出来なかったからだ。


 


「キュレ、どうした?」


 エルフの王女の元に訪れた時の事を思い出していたキュレはルゲルの言葉に我に帰る。


「い、いえ……!?しかしエルフの先代王女からあのレーヴァテインを託されて随分と修復が進みましたね……」


 キュレは、ルゲルの仕事場の奥にあるレーヴァテインに視線を向ける。


「まぁ…なんとかな……」


 しかし、ルゲルはその言葉とは裏腹に難しい表情をしている。


「ご安心下さい……」


「……ん?」


「ロンは必ず連れ戻します!!」


 そのキュレの言葉にルゲルは何も言わずにゆっくりと腰を上げてレーヴァテインを保管している仕事場の奥に向かう。


「では、行きます……」


 キュレはルゲルに一礼して、踵を返す。すると、その背に向かってルゲルがくぐもった声で告げた。


「頼むぞキュレ……」


 その胸に熱いものが滾るようだった。ルゲルのその一言の中には様々な思いがあることをキュレは解っていたからだ。ルゲルは普段は殆ど話すこともせず、常に黙々と武器の作成や修復に勤しんでいる。が、その心の奥底ではロン・ベルクの事を常に気に掛けている。口では自分の元から去っていったかつての弟子を悪くは言うが、本当に心から袂を分かったワケではないのだ。


 共に腹を割って話せば恐らくすぐに解り合える筈なのだが、敢えてそうしないルゲルとロンにキュレは呆れながらも二人を再び繋ぐ架け橋となる役割はルゲルのもう一人の弟子である自分にしか出来ないと思っていた。


「はい……」


 そう一言口にしてキュレはロン・ベルクの元に向かった。この胸にあるもう一つの想いを密かに抱えて。


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✦作者コメント✦



 前回に引き続き、ロン・ベルク関連の話しになります。魔界の名工と呼ばれている彼ではありますが、やはりその師となる存在もいたのでは?と考えて今回オリジナルのルゲル・ベルクというキャラを登場させました。さらに、ロン・ベルクのいわゆる兄妹弟子という位置付けでキュレという女魔族のキャラも作ってみました。まぁ彼女もかなり重要なポジショニングを今後担う存在ですね。

 因みにロン・ベルクのベルクとは、その鍛冶職人の流派の名称らしいので、正式にはベルク流のロンという事になると、三条先生があるところでおっしゃっておりました。

ピラァ・オブ・バーン



─ロン・ベルクの危惧─


 


 オーザム南部の地に足を踏み入れたロン・ベルクはそこに聳え立つピラァの周辺を探っていた。


 ほんの数日前、大魔王バーンが地上の六つの地点に投下した、このピラァ・オブ・バーンはバーンの長きに渡る地上破滅計画の最大にして最後の一手だった。しかし、神の涙であったゴールデンメタルスライムの不可思議な奇跡の力により勇者ダイの意思を受けた人々の手でピラァ・オブ・バーンによる地上破滅計画は失敗に終わった。


「……とりあえずはここも問題はなさそうだ……」


 大戦後の翌日から今日で三本目のピラァの状態を確認したロン・ベルクは、例のピラァだけでなくその周辺の様子も時間を掛けて探っていた。一本につき、半日以上も費やして辺りを見て回る程に時間を掛け、決して警戒心を絶やすことはなかった。


「あのバーンの事、ただの地上破滅計画の為だけにこのピラァを落としたとは思えなかったが……やはり、俺の考え過ぎだったか……」


 ロン・ベルクは地上のどの存在よりも大魔王バーンと近い位置で関わりのあった男であった為、バーンの恐ろしく狡猾な面もよく理解していた。


(「六芒星……魔力を増幅させて高めた状態でこの地上の破壊を企てていたと言うが……ヤツは俺にこうも言った……いくつかの爆弾の時限装置が作動しなくても一つでも爆発すれば残った核晶(コア)が誘爆するのは必至……と……」)


 ロン・ベルクはあの時のバーンの言葉を思い出していた。そして、ピラァの頂上にある黒の核晶(コア)を思い浮かべながらその頂上を見上げた。やがて、上空に飛び立つとそのピラァの頂上に降り立ち氷漬けの黒の核晶(コア)を睨み付けた。


「あの時は俺も聞き流したが、よく考えたら妙に違和感のある言葉だった……この地上を吹き飛ばすなら少なくとも三本のピラァにある三つの黒の核晶(コア)があれば充分……おおよそ人が簡単に立ち入れない地などにピラァを落とせばもっと簡単に地上破壊は成し得た筈だ……そうなれば、わざわざ六つの核晶(コア)など用意する必要はない……ましてや六本のピラァの六芒星により魔力を増幅させる必要など、どこにあったのか……」


 ピラァの頂上から見た景色は晴れ渡り、かつてロン・ベルクが魔界で見ていた景色とはまるで違う美しさが広がっていた。


「バーンはこの景色をも全て消し去ろうとしていたというのか……本当にそれだけの為にこのピラァと黒の核晶(コア)を……」


 その時、ロン・ベルクの脳裏にダイが空に消えたあの時の光景が広がった。


「……!?まさか……!そうだ!あの時のヤツのあの言葉!?」 


 思い出されるのはダイが死闘の末に大魔王バーンを打ち、地上に帰還したその後……首を傍らに持った不気味な様相で姿を表した死神……そして、その時に自分が本物のキルバーンと名乗った一つ目ピエロのあの言葉。


(「ヴェルザー様は大魔王と違って地上も欲しいんだ」)


 ロン・ベルクはその事を考えていた。


「このピラァの六芒星は……まさかヤツの……ヴェルザーへの何らかのメッセージか!?もし、なんらかの形で地上破滅計画が成されなかった時の為に……ヤツに、ヴェルザーに何かを託す為に……!?」


 ロン・ベルクは自分が思い当たったこの考えに戦慄した。


「いや、しかしそれを証明するには、まだ根拠が足らん……何かこのピラァの存在とヴェルザーに繋がるモノがなければ……」


 両腕の傷が疼いている。手を握り締めても本来の半分の力も入らない。もどかしい思いがロン・ベルクの胸中を抉るようだった。


「ダイ……やはりダイの存在がなくては…再びこの世界に迫る大きな危機に太刀打ち出来ん……」


 そう言うと彼はパプニカの方角に目を向けた。


「あの剣は確かパプニカにあったな……」


 大魔王バーンを倒したダイは空からその自身の名を冠されたダイの剣と共に落ちて来た。その際に大地に突き刺さった剣は、現在パプニカ王国において厳重に保管されている。


 そして、ロン・ベルクは何かを思い付くとピラァの頂上から降りてオーザムのより雪深い地域へと足を踏み入れて行った。


「この地上に初めて足を踏み入れて以来だな……まさか、くたばってはいまいな……我が師よ……」


 そう呟くと、彼はある目的地を目指してその歩みを進めた。


 

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✦作者コメント✦



 さて、いよいよ少しずつ黒の核晶(コア)について物語を進めていきたいと思います。たまたま先週はテレビアニメのダイの大冒険で大魔王バーンが黒の核晶(コア)で、死の大地吹き飛ばしてくれました。アニメで表現されると凄いですね(^^;やはり、おそるべし魔界の超破壊兵器といったところです。こちらとしてもその破壊力をいかんなく表現したいところですが、ロン・ベルクがいち早く気付いてました。無論このまま黒の核晶(コア)を放っておいていいワケないですから、彼には今後も色々仕事をして貰おうと思います。暫くは武器が作れそうにないので……(^^;今後のロン・ベルクにもご期待下さい。