ダイの大冒険─最終回後─二次小説

ダイの大冒険最終回後の二次小説になります。

黒の悲劇



─空に散る 風に眠る─ 


 


 勇者ダイと大魔王バーンの壮絶な死闘は勇者ダイの勝利に終わった。


 しかし、勝利の歓喜も英雄の凱旋の祝福も束の間に終わる。


 かつて、大魔王バーンと魔界を二分していた冥竜王ヴェルザーの配下である、死神キルバーンがアバンに首を切断されていたにも関わらず生きて再びダイ達の元に現れたのだ。アバンに倒されたと思われていたのはあくまで、人形。常に傍らにいた一つ目ピエロのピロロこと本当のキルバーンが操っていたという衝撃の事実を突き付けて……


 また、死神は語る。かつてダイの父バランの命を奪い、また世界中に破滅の足跡を遺さんとした最恐最悪の魔界の超爆弾、黒の核晶(コア)が人形の頭部に埋め込まれていたのだと。そうして死神の指がその黒の核晶(コア)を発動させた。


 しかし、ダイはその黒の核晶(コア)から仲間達をそして地上の全てを救うべくその命を捨てて一人、爆発の中に消えた。


 その場の誰もが息をの飲み、緑衣の親友はその爆発の最も近いところで、絶望をその身、その心に受けた。


 勇者を愛する白く気高き姫はその悲壮な叫びと涙で大切な人を失う悲劇にまみれた。


 そして、その姫レオナは掛け替えのない大きな存在を失ったショックからその場で過呼吸となり気を失い、そこから丸一日目を覚ますことはなかった。


 また、黒の核晶(コア)を埋め込まれた死神キルバーンの身体をダイと共に上空高く運んだ緑衣の大魔道士ポップも、途中ダイから蹴落とされた為、爆発の直撃は避けられたものの爆風だけでもその衝撃は凄まじく、ポップの身体にも精神にも大きなダメージを刻んだ。爆発の衝撃で気絶したまま爆風に煽られ落下してきたところを武闘家の跳躍力を駆使したマァムがポップの身体を受け止めると、すかさずアバンが回復魔法と持ち合わせた薬を使い治療に当たった。しかし、裂傷や体力などの身体的なダメージは多少回復させることは出来たが、魔界の究極の破壊兵器によるダメージはことのほか大きく、その場での完全回復は望めなかった。そして、ポップもまた眠りにつき彼は三日三晩、目を覚ますことはなかった。


 


 黒の核晶(コア)の悲劇は、単にその恐るべき破壊力をその場の全員に見せ付けただけではなく、大魔王バーンの地上破壊の野望から世界を救った勇者を奪うことで、悲劇と絶望を降り注いだのだった。


 怒りに任せて感情を爆発させた者もいた。己の不甲斐なさを嘆いた者もいた。懸命に傷付き倒れた者を救おうと力を尽くした者もいた。勇者が失われたその場には、あらゆる思いが渦巻いていた。しかし、そのどれもが、前を向くには余りにも脆弱であった。


 

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◼作者あとがき


 

 ここは、最後にして最大の悲劇的シーンでした。原作を読んだ当時、自分自身も少し放心していた記憶があります。それほど、悲しい最後でした。ま、その先の展開で少しは救われましたが、ある意味、このシーンが今回の最終回後の話しを書こうと決意させてくれたのかも知れません。


 彼等はここから、また、新しい様々な戦いに臨みます。